SCS評価制度★3のバックアップ要件とは?遠隔地バックアップとリストア手順書の作り方
「SCS評価制度の★3でバックアップが求められているけど、今のバックアップで足りているの?」と不安に感じていませんか。
結論から言うと、★3のバックアップで確認されるのは次の3つです。
- 対象・頻度・保管期間を決めてバックアップを取っていること
- 重要な機密情報は、離れた場所にもバックアップしていること(遠隔地バックアップ)
- バックアップ対象ごとにリストア(戻し方)の手順書があること
「NASにコピーしているから大丈夫」と思っていても、ルールや手順書がないと基準を満たせません。この記事では、★3の評価基準の原文をもとに、中小企業がバックアップで準備すべきことを解説します。
この記事でわかること
- ★3のバックアップに関する3つの評価基準
- 遠隔地バックアップの考え方と現実的な方法
- リストア手順書に書くべき内容
- ランサムウェアに備えるときの注意点
私は情報処理安全確保支援士の資格を持つセキュリティマネージャーで、勤務先で★3の評価基準のチェックを完了しています。SCS評価制度の全体像はSCS評価制度とは?★3の要求事項と中小企業がやることを解説をご覧ください。
★3のバックアップに関する評価基準
バックアップは、★3の要求事項「4-3-4 適切なバックアップ」で求められています。評価基準は次の3つです。
| 評価基準 | 原文 |
|---|---|
| 4-3-4-1 | 取得対象、取得頻度及び保管期間を定めて自社で取り扱うデータのバックアップを取得すること。 |
| 4-3-4-2 | 重要な機密情報については、No.4-3-4-1におけるバックアップに加えて、遠隔地バックアップを実施すること。 |
| 4-3-4-3 | バックアップ対象ごとにリストア手順書を整備すること。 |
また、復旧に関する要求事項「7-1-1 事業継続要件に沿った復旧準備」では、事業上重要なシステムについて目標とする復旧レベルを決め、そこまで回復するための準備をすることが求められています。バックアップは、この復旧準備の中心になる対策です。
ステップ1:対象・頻度・保管期間を決める(4-3-4-1)
まず、何を、どのくらいの頻度で、いつまで残すかを表にします。
| 対象 | 取得頻度 | 保管期間 | 保存先 |
|---|---|---|---|
| ファイルサーバ(共有フォルダ) | 毎日 | 30日分 | 社内NAS+クラウド |
| 会計・販売管理データ | 毎日 | 1年分 | 社内NAS+クラウド |
| サーバのシステム全体 | 毎週 | 4世代 | 外付けディスク |
| Microsoft 365などのクラウドデータ | サービスの保持機能を確認 | サービスの仕様に従う | クラウド |
表の数字は一例です。「何日前の状態まで戻せれば業務が困らないか」「どれくらい前のデータまで戻したいか」を、業務の担当者と一緒に決めるのがポイントです。
クラウドサービスのデータも忘れずに
Microsoft 365やGoogle Workspaceにはごみ箱や版の管理がありますが、保持期間には限りがあり、誤削除やアカウントの乗っ取りによる一括削除に備えたバックアップとは性質が異なります。クラウドのデータもバックアップ対象に含めるかどうかを検討し、含めない場合はその理由を記録しておきましょう。
ステップ2:重要な機密情報は遠隔地にもバックアップする(4-3-4-2)
遠隔地バックアップは、火災・地震・水害やランサムウェアで本社のデータとバックアップが同時に失われるのを防ぐためのものです。対象は「重要な機密情報」なので、どの情報がそれにあたるかは、機密区分のルール(3-1-4)で決めておく必要があります。
中小企業で現実的な方法は次のとおりです。
- クラウドバックアップサービス:自動で社外のデータセンターに保存できるので、手間がかかりません。
- 別拠点のNASへの複製:支店や工場など、別の場所に拠点がある場合に使えます。
- 外部メディアを別の場所で保管:外付けディスクに取って社外の金庫などで保管する方法です。持ち出しの手順と暗号化が必要になります。
「どのくらい離れていれば遠隔地か」は評価基準には書かれていません。同じ災害で同時に被害を受けない場所を選ぶ、という考え方で決めておき、解説書が公表されたら確認するのがおすすめです。
ステップ3:リストア手順書を作る(4-3-4-3)
バックアップは「戻せて初めて意味がある」ものです。評価基準では、バックアップ対象ごとにリストア手順書を用意することが求められています。手順書には次の内容を入れておきます。
- 対象システムとバックアップの保存場所
- リストアを判断する人と作業する人
- リストアの操作手順(画面のスクリーンショット付きだと安心)
- 戻したあとの確認方法(ファイルが開けるか、システムにログインできるか)
- 保守事業者やサービス提供事業者の連絡先
手順書は、担当者以外が読んでも作業できるレベルで書くのが理想です。担当者が不在のときや、担当者のパソコンがランサムウェアに感染したときにも使えるよう、紙やオフラインの場所にも保管しておきましょう。★3対応テンプレート集には「バックアップ手順書」のひな形があります。
年に1回はリストアを試す
★3の評価基準に「リストア試験」という言葉はありませんが、手順書が正しいかを確かめるには実際に戻してみるのが一番です。「バックアップは毎日成功していたのに、いざ戻そうとしたら一部のフォルダが対象外だった」というのは、よくある失敗です。
ランサムウェアに備えるときの注意点
最近のランサムウェアは、社内のファイルだけでなく、ネットワークにつながったバックアップも狙います。次の点を確認しておきましょう。
- NASのバックアップ領域が、普段使うパソコンから直接書き換えられる状態になっていないか
- バックアップの管理画面のパスワードが、ほかのシステムと使い回されていないか
- 少なくとも1つのバックアップは、ネットワークから切り離されているか、書き換えできない設定(イミュータブル)になっているか
万一ランサムウェアに感染したときの動き方は、インシデント対応手順の作り方で解説しています。
まとめ
- ★3では、対象・頻度・保管期間を決めたバックアップ、重要な機密情報の遠隔地バックアップ、対象ごとのリストア手順書が求められる
- 遠隔地バックアップは、クラウドバックアップや別拠点への複製が現実的
- リストア手順書は担当者以外でも作業できるように書き、オフラインにも保管する
- ランサムウェア対策として、少なくとも1つのバックアップはネットワークから切り離す
今の対応状況はSCS★3セルフチェックで確認できます。ほかの要求事項は、多要素認証、IT資産台帳、インシデント対応手順の記事で解説しています。自社だけで進めるのが難しい場合は、SCS評価制度の対応支援でご相談も受け付けています。
出典
評価基準の引用は2026年4月21日公開版にもとづきます。解説書や評価ガイドが公開されたら、この記事も更新します。










